『遥か別』『ロングヘアー日記(仮)』/文フリで手に入れた日記

文フリで買った本を読んだ。 『遥か別』伊藤佑弥さん自分は日記というものを最近あまり書いていなかったし人の日記も読んでいなかったので、久々に人の日記を読めて新鮮だった。つい先月、2023年4月のことを記してあったから、私も日記中で触れられている出…

パフェ食いたい

朝起きたらワクチンの副反応で重だるく、頭痛。朝一番の会議に出て、いくつか仕事を片付け病院へ。残念でしたと告げられる。 帰りの電車で一粒だけ泣き、終わる。昨日M-1でやたらビールのCMが流れていたからヤケ酒として1本買って帰ろうかと思ったが、今まで…

20221217

BT5 移植して5日が経った。 もっと不安で死にそうな感じで過ごすかと思いきや、仕事が忙しく案外ニュートラルな感情のまま。 判定日で陽性だと言われてからが、本当の地獄だと思う。だるい、ねむい、ねていたい。

20210223

ここ一週間くらい、加虐心に蝕まれることがたびたび起こる。道ゆく乳飲み子だとか、同居人だとかにとにかく酷い仕打ちをしたくなる。ただその感情は一過性のもので、三十分や一時間ほどすればゆるゆると抜けていく。春だから気が触れているのか、不摂生な生…

20210207

逃げられない。 もう逃げられないところまできてしまったのだとようやく自覚して観念した。わたしはもうこいつとしか生きていけないしたぶん、おそらく、こいつに食わせてもらわなければならないし何かを新たに始めるにしてもコストが高すぎる。もうこいつと…

20210213

今日は春のようか暖かさで上着もいらないほどだった。あれだけ遠くにいたような気がした春も確実にこちらに近づいてきている。あちらが近づいてきているのか私たちが近づいていっているのかよくわからない。なんとなく輪郭だけがわかる不安を押し殺して淡々…

利己的な同情

朝、夜の間に降った雨に濡れる草を掻き分けて走る。犬がこちらを見てニコニコしながら並走する。途中で気になる女性を見つけて、犬が何度も彼女のほうへ行こうとするのを静止する。犬と一緒にその後ろ姿を見送ると、リュックに付いたマタニティマークが寂し…

卵からひよこは孵りますか

2021年9月29日、D1、つまりリセットです。 今周期はなんだか手応えがあったのですが卵は誰とも出会わなかったようです。年々、卵を無駄に毎月垂れ流しているような気がします。不育症に加えて不妊症も併発しかけているのではと疑ってしまう。30歳、産むには…

そして「まぶしくないね」って言う

夏なのに、あまり夏じゃないから。 だから自分の誕生日を迎えたときも「あれ、誕生日なんだっけ」と拍子抜けした今年。ひんやりした風を避けるように白いパーカを羽織って犬の散歩へ行く。真夏の真昼間にこの犬が散歩に行けるだなんて、もしかしたら彼女が生…

私は妊娠を寿ぎたくなんてなかった

姉は次々とグレープフルーツジャムを口に運んだ。張り出したお腹のせいで、堂々と威張っているように見えた。もろくて今にも崩れそうな果肉のかたまりが、姉の喉をすべり落ちていった。 『PWHは、胎児の染色体も破壊するのかしら』 鍋の底で、怯えるよう…

劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンは「ギルベルト・ブーゲンビリアと儚い夢」で完成する

※このnoteには「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」および入場特典冊子「ギルベルト・ブーゲンビリアと儚い夢」のネタバレが含まれます。こんにちは、せのです。普段はつらつら中身のない日常生活のエッセイをここで書いているのですが、もうどうしよ…

瓶詰めのヴィーナス

少しだけ開かれたドアの隙間から、だらりと力なく垂れた白い腕が見えた。「24歳の誕生日を迎えられたら、お祝いしてね」以前から彼女はそう言っていた。極めて軽い口調で。花のほころぶような笑顔で。僕がはいはい、と受け流すと、彼女は満足したように頷い…

夏至の午後

久々に駅前まで出かけた。この街に引っ越して半年以上経つのにまだ駅周辺を全然探索してなくて、二人で手をつなぎながらぐるっと駅周辺を回った。歯医者、パチンコ屋、美容室、不動産屋、居酒屋、公園。なんてことない街の風景なのに、なんてことない街の風…

ぐるっとまわって

やることがあるんだかないんだかよくわからなくなったので、本当はダメだけど今日はお酒を飲んでしまった。飲んだ後にやっぱり息苦しくなって飲まなきゃよかったなと思った。夕方、夫が犬の散歩へと連れ出してくれた。緊急事態宣言中には子どもやランナーで…

久坂葉子を思う

自身の死について思いを馳せるとき、私がいつも思い浮かべるのは久坂葉子だ。久坂は21歳で早逝した作家だ。私は大学生の頃から好きで、在学中には彼女の歳も超えてしまったがそれでも、彼女の儚さから離れることはできなかった。小母さん。私は頭の中が整理…

そこにあなたがいない海

私が砂浜に素足をさしいれるとそれはほとんどの抵抗も見せずに飲み込んでくれた。私はそのことにひとつ安堵し、もうひとつの足も砂浜に渡した。波の音は規則的で耳の奥をざりざりと心地よく削ってくれる。砂浜には流木やらゴミが散乱していて、さっきまでゴ…

最近のこと

最近ようやく仕事も軌道に乗ってきて、仕事のほうから私を訪ねてくるようになった。それなりに交渉に心が折れることもあるけれど、まあまあ好きな仕事を気楽にできているのでよかったなと思っている。夫もこのところの感染症騒ぎでリモートワークをしている…

薄く引かれた白線、無意識、三月一日

寝て起きたら三月になっていた。月日の経過が早いのか遅いのかわからない。昨晩は妙な夢を見て、その夢の内容は日の落ちた今ではもうわからないけれど、妙だったなあと胃のあたりがじんわり痛む。その感覚がその夢の存在をささやかに主張している。毎月の体…

つめたいからだと春の匂い

外に出ると春の匂いがする。強く吹く風がトレンチコートを揺らして、私の鼻腔もいっしょにくすぐっていく。ああ、また来たなあ、だいきらいな春。喉の奥から膨らんでくるあくびを噛み殺して駅までの道をなるべくゆっくり歩く。春の足音が近づいているという…

犬がかわいすぎてつらい

犬がかわいすぎてつらい。うちの愛犬のシェルティがかわいすぎてつらい。2歳。トイレもおてもまてもふせもできる、かわいい、天才。犬がやってきてからずっとずっと死にたい夜がなくなった。死にたい気配がしたら犬を抱きしめると気持ちが和らぐ。犬はすごい…

三人の交わらない女たち

私たちはだいたいいつも離れたところにいて、お互いに干渉しないようにしている。すっかりそれが当たり前になって十年。同じ父母を持つ三人の少女はいつのまにか女になり、一人は東京へ行き、一人は子を産み、もう一人は春から地銀で働く。長女の私は家を離…

ミジンコになっても書く阿呆

親友(悪友?)から「書きマグロ」と言われたことがある。書いていないと死ぬ書きマグロ。そんな私は今、仕事の原稿から逃れたくて書いている。もともと書くことはあまり好きではない。できるなら書かずに死にたい。それなのになぜか書くことで生活すること…

夕飯って、心の栄養補給なのかもね

夫が険しい顔をして帰ってきた。乾いた風でセットした髪は乱れ、頬は冷え切っている。聞けば今日はいらいらすることがたくさんあったのだと言う。夕飯のキーマカレーをあたためて白菜のサラダを皿に盛りながら、わたしは今日はなにがあったの、と尋ねた。夫…

みっちゃんの世界

みっちゃんは十歳で人がきらいだと言った。正確には人との関係がめんどくさいということらしい。みっちゃんは私よりも背が高く、スカートを穿かずいつも前髪も一緒にひとつ結びにしてよく本を読む、そんな女の子だった。みっちゃんのお父さんは大学の先生で…

好きを仕事にするリスクについても考えようよ

仕事をしていると、たまに「書く仕事に就くにはどうすればいいですか」と聞かれることがある。なんで書く仕事に就きたいのか尋ねると十中八九、「書くことが好きだからです」と返ってくる。好きを仕事に。インターネットの発達につれ、個人による発信が容易…

短歌連作「うつくしい休日」

「うつくしい休日」飛び込んで目を突き刺して銀杏色 白昼堂々ゆるやかな殺人白球を追いかけてゆけ溶けてゆけ すべてきいろに飲み込まれてゆけ飛んでいかないであなたの声だけをあの樹の下に埋めておいたの爪を立てる肌は私を受け入れるぷつ、り透明ぷつ、り…

瀬野ひとみという物書きについて

そういえば物書きとしてのせのについて自己を紹介していなかった気がするので作品と一緒にまとめてみました。興味があれば読んでいただけると嬉しいです。せのと文芸瀬野ひとみと言います。Twitterでは「せの」と名乗っていることが多いです。小説やエッセイ…

拝啓、愛する横浜さんへ

突然ですが、私は横浜さんのことが好きです。意気揚々と上京して最初は都内で物件を探すもお金がない。そんな途方に暮れていたときに手を差し伸べてくれたのが横浜さん、あなたでした。私たちは横浜さんの西の隅っこに住むことになりました。多くの人がイメ…

猫の気ままさに揺られて

吉行理恵『小さな貴婦人』を少しずつ読んでいる。1981年に芥川賞を受賞した本作は、チャコールグレーの猫を軸に物語が進んでいく。どの猫も主人公の生活に馴染み「いい猫だった」と評される。いい猫ってなんだろう。猫を飼ったこともないし猫アレルギーであ…

静かな台所

会社員としてフルタイムで働くことをやめて、台所に立つことが増えた。毎食、料理を作ることができている。自分で作った料理は、当たり前だが自分好みの味付けにできていい。どうにも濃い味付けが苦手なので薄味に作っている。と言ってもいつも目分量だけど…